6.15.ピストル(独唱)


6.14(日)日本青年館。
いつものハロプロライブやイベントとはちょっと違う異質な空間がそこにはあった。
普段ライブ会場に居るような、派手な服装に身をまとった“いかにもなヲタ”はほとんどいない。
席が1人ずつバラバラなために知り合いと連番できる人も少ないので
開演前の会場内は異様なほどに静まり返って居た。
そして、ステージ上で「DIN」を歌い踊る3人は、まだまだ素人臭さが抜けきれない
いかにもB級アイドルチックな雰囲気を醸し出している。
この光景は私がまだモーヲタじゃなかった頃に頭の中で思い描いていた「アイドルイベント」
そのものだった。

今回この場所に参加して私は数年前の気持ちをちょっと思い出すことになった。
まだ、ピストルなんて名前を名乗ってなかったあの頃のことを。



99年の夏。
それまで29年間生きてきてアイドルというものにまったく興味がなく
アイドルファンというものを軽蔑の目で見ていたあの頃。
そんな私が、徐々にモーニング娘。の魅力にとりつかれ
後藤真希という人物の登場で完全にこっちの世界に連れてこられたのだ。

当時はアイドルヲタクや、いわゆる秋葉系のヲタクが嫌いでしょうがなかった。
中古CD屋で働いている知人が居るのだが、林原めぐみが入籍したというニュースが
流れた翌日、彼女のCDを全部まとめて売りに来た男が1日に3人も居たそうだ。
広末涼子に男の噂が出た時も同様だったらしい。
そんな話を聞くたびに、こんな人種には絶対関わりたくないと強く思ったものだった。

しかし、後藤真希の出現により私の人生は狂いはじめた。
生写真が欲しい、グッズが欲しい、ごっちんが関わったものなら何でも欲しい。
TVはすべてビデオに取り、毎日何度も繰り返し見続けた。
そして、私の体はTVで見るだけでは我慢できなくなって来たのだ。

コンサートに行ってみたい...ごっちんに生で会いたい。

10代の頃からライブは年に数十回は参加していたが、アイドルのコンサートに行くなんてことは
とてもじゃないが考えたことなどなかった。
モーニング娘。に興味を持ち始めても、まさかコンサートには行くなんて考えもしなかった。
しかし、私の体はもうどうにもならなくなっていたのだ。
CDに封入されていた入会案内を使い、私はFCに入会することに決めた。
そして市川で行なわれるモーニング娘。のコンサートに参加することにしたのだ。

昼公演と夜公演。
一日に2公演あるなんて私が今まで見て来たライブではありえないことだ。

昼と夜どっちがいいんだ?何が違うんだ?

何もわからない私は黙って昼夜両方申し込んだ。
見れるものならいくらでも見たかったというのが正直な気持ちだ。
1人でアイドルのコンサートに参加する。それも昼夜2公演。
あのアイドルヲタク達の巣窟に俺が1人で参加するのか?大丈夫なのか?
想像するだけで不安でしょうがなかった。
コンサート会場でみんなで同じように手を振ったり、声を出したりすることが
死ぬほど嫌いだった私にとって、初参加前の緊張はただならぬものがあった。


そして当日。
朝から体中が緊張で汗ばんでいた。
会場は私の家のすぐ近く。もし万が一、知り合いに見られたらどうしよう。
そんな心配をしながら会場へ向かった。
会場前は私がもっとも嫌いだった人種で溢れかえっている。
以前は遠巻きに白い目で見ていた人種だ。
しかし、その場にしばらく居るとなんだか居心地が良くなってきた。

『こいつらみんなモーニング娘。が好きなんだ。』
『ここに居るとモーニング娘。が好きだって事を恥ずかしがらなくてもいいんだ。』

そんな安堵感が私の体を駆け巡った。
会場に入ると、私と同じように1人で静かに席に座っている男がたくさん居る。
最近のコンサートのように集団で来ている人は少ないし、年齢も若干高目だ。
子供や女性はほとんど見かけない。派手な服装に見をまとっている者も少ない。
私にとっては非常に居心地が良い空間がそこにはあった。


客電が落ち、遂にコンサートがスタートした。
みんなサイリウムを手に取り出して、かけ声をかけながらそのサイリウムをステージに
向かい振り始めた。
当然、サイリウムなんて用意していない私は、ただステージに居るメンバーを
棒立ちになりながら見つめるだけだった。
しかし、コンサートが進むにつれ、自然と体が動きだし、手拍子をして、後半では
見よう見まねで声も出すようになっていた。

楽しい。

普段、参加してたライブとはまったく違った楽しさがそこにあった。
昼だけ見て満足だったら夜は見ないで帰ろうと思っていたのだが、とんでもない。
次は最初から乗りまくってやる!そう誓って夜公演もノリノリで参加した。
この日から、私は『モーニング娘。を好きな人』から『モーヲタ』に変ったと言えるだろう。
それからは毎回ツアーがあるたびにコンサートに参加することになったし、グッズもすべて
買い漁ることになった。昔のものは大金を注ぎ込んでヤフオクで買いまくった。
娘。が載ってる雑誌はすべて買うし、TVやラジオもすべてチェックするようになっていった。



加護ちゃんが娘。に加入し、ごっちんから徐々に加護ちゃんへと私の思いは移って行った。
ごっちんに持っていた思いと加護ちゃんへの思いはまったく別だった。
当時のごっちんに対する私の思いは、アイドルヲタクがアイドルに抱く気持ちに近かった
と言えるだろう。
しかし、加護ちゃんに対する気持ちはまったく違った。
むしろ、ブランキーなど好きなミュージシャンに抱く気持ちに近いものがある。
ごっちんを中心に娘。を見ていた私は、いつの日からか加護ちゃんを中心に見るように変っていた。
そして、娘。を見る気持ちもアイドルを見る気持ちとはまた違った感じになってきていた。
私の中では、加護ちゃん推しになる前と後では、娘。に対する思い自体が違ってしまったのだ。
それは単純に推しが変ったという問題だけではない。
応援の姿勢、スタイル自体が変化してしまったのだ。


ごっちんがモーニング娘。を抜けて、ソロ活動を始めた。
ここ2年、ほとんど加護ちゃん中心にステージなども見ていたので、ごっちんを久しぶりに
真正面から見た気がした。
ミュージカル、そして初のソロツアー。
私がごっちん推しだった頃の彼女とはまったく違う。
アーティストとしてタレントとして素晴らしいまでの存在感を醸し出している。
私がごっちんを夢中になって見ていたあの頃、彼女は娘。で一番年下のメンバーだった。
今はハロプロの看板アーティスト。ステージの迫力もある意味ではハロプロ・ナンバーワンだろう。
私は今、加護ちゃんとごっちんという素晴らしいアーティストを別々に両方楽しめることができる。
もし、ごっちんが娘。に残っていたら、今のようにごっちんを見ることはできなかったハズだ。



そして今日、新たに今まで感じたことのない楽しみが味わえる予感がした。
どうしようもない程に素人臭い彼女がこれからどう変化して行くのか、
それをこれから見ていくことは非常に楽しみなことだ。
今まで私はこのようなタイプに惹かれることはなかった。
ある種のカリスマ性を持ったメンバーに惹かれ続けて来たので。
しかし、今回は不思議と惹かれるものがある。
これはごっちんにも加護ちゃんにも思ったことがない気持ちだと言える。


モーヲタになって約4年。
加護ちゃん1推し、ごっちん2推しと言いつづけて来た訳だが、
今日から3推し・さゆみんと宣言することにする。
ただ、くれぐれも勘違いしないで欲しい。あくまで3推しだ。
1.2.3.のスリーだ。辻ちゃんが言う所のスレだ...いや待てよ、辻ちゃんを今の時点で抜く訳には
いかないな。
うん、さゆみん4推しという事にしておこう(w


秋からさくらとおとめに分かれる訳だが、私にとっては非常に好都合になって来た。
加護ちゃんとさゆみんが同じステージに上がったら、さすがにさゆみんが視界に入ることは
ないからだ。
さくらでは加護ちゃんロックオン。おとめでは辻ちゃんとさゆみん。
そして、娘。コンと重ならない時はごっちんコン。

ああ、なんて幸せなんだろう。つんくありがとう。