11.8.史上最強の敵・米村傳治郎現る!〜サイエンスステージ〜





常勝。
加護亜依、辻希美の2人がTV番組に出演すれば、必ずや相手を粉砕し勝ち続けてきた。
相手が強ければ強いほど2人は本気モードに突入し、情けをかける事無く倒してきた。
石橋、さんま、所、そしてダウンタウン、お笑い界のトップに君臨する強者達も
2人の前ではまったく歯が立たなかった。

ドカベンこと山田太郎率いる明訓高校も「常勝」が使命であり、強敵を倒し優勝し続けた。
その明訓高校が一度だけ負けたことがある。
山田太郎が高校2年生の夏の時だ。相手は弁慶高校。
武蔵坊、義経というメンバーは過去の対戦相手とは異質の存在であった。
明訓が負けたシーンを週間チャンピオンで読んだ時、私はショックで頭が真っ白になった。
私が小学6年の時である。
「明訓が負けるなら、こいつらしかいない。」明訓が負けたショックは大きかったが、
弁慶高校ならばしょうがない、そのような思いがあったのもまた事実である。
すべてのライバル達が持っていた「明訓に勝つ。」の思いと、弁慶高校が背負っていたものは
まったく別次元であった。もっと違う、更に上の次元に彼らは立っていた。


Wが初めて負ける。そんな日が訪れてしまうのであろうか?
弁慶高校と同じく、この男も今までの敵とは立っている場所があまりにも違っていた。
加護ちゃん、辻ちゃんにとって過去最強の敵である事は間違いない。







土曜日の午後4時。NHK。
一連のW出演番組とはあきらかに違うステージ。ホームともアウェーとも言えない微妙な場である。
観客は子供と親が中心でWの守備範囲であったが、2人が登場しても歓声1つあがらない。
かなり手強い観客だ。
そして、女性司会者の紹介で今回の対戦相手が登場する。



両手に風船を持ち、その先にはビニールの物体(クラゲ)が静電気で宙に浮いている。
あまりにも奇妙すぎる登場シーンである。Wの2人にとっては明らかに未知の敵だ。
「加護ちゃん、ちょっと後ろを向いてもらえますか?」男はいきなり加護ちゃんに話し掛ける。
急に話し掛けられた加護ちゃんは、おっかなびっくりで「なぁに?」と返すが、
男の言う通りに後ろを向く。
すると!!



宙に浮いていたビニールのクラゲが加護ちゃんの背中に襲い掛かる!
まだゴングすら鳴っていないのに、いきなりの奇襲攻撃だ。
「かわいそうだから取ってあげる。」そうサラッと言いのけた男は、
加護ちゃんの背中からその物体を取り外した。
奇襲攻撃は加護ちゃんの専売特許であるハズなのに、男に先手を取られてしまった。



米村傳治郎(よねむらでんじろう・科学実験スペシャリスト) 参考サイト1 2
「鉄腕アトム」などに出てくる「博士」に憧れ、
「科学」に自分のすべてを捧げた男。
過去にも「うたばん」や「おしゃれ関係」などの
TVに出演した経歴もあり、「科学」を世に広めるためには
手段を選ばない。
一見、何の変哲もないおっさんだが、良く見ると分かる。
目が違う。笑いながら人の体を切り刻める目をしている。
狂人の目だ。



Wが過去対戦してきた「おっさんキャラ」は2人の名前を間違えたり、子供扱いしたり、
礼儀を知らない奴が多かったが、傳治郎はその点でも一味違う。
「ダブルユー」「辻ちゃん」「加護ちゃん」と正確に相手の名前を把握している。



最初のゲームは「空飛ぶクラゲゲーム」。
傳治郎はクラゲ(ビニール)に静電気をおこすためにマフラーを使い擦り始めた。
「この時のポイントは必死にやること」と傳治郎。
すると、「そのまんまですね!」とWの2人が完璧なハモリ突っ込みを入れる!キタキタキター!!



クラゲゲームは傳治郎は戦わずレフリー役を務め、加護ちゃんと辻ちゃんが対戦することに。
互いに風船を持って、相手の風船にクラゲをつけるゲームだ。
見事に辻ちゃんが勝利を掴む。
辻ちゃんがうれしそうに勝利についてのコメントを話している、その最中!



傳治郎が手に持っていた風船を辻ちゃんに向けて発射した!再び奇襲攻撃である。
風船が直撃した辻ちゃんはただ笑って返すのみ。恐るべし傳治郎!
奇襲攻撃がうまく決まった傳治郎は、すぐさま「科学のうんちく」を喋り始めた。
流れをどんどん自分のペースに持って行く気である。



しかし、そこは百戦錬磨のW。
傳治郎の「うんちく」を聞こうとせず、2人で風船を使い遊び始める。
そう簡単に相手のペースに飲まれてたまるかといったところであろう。



続いて長い風船をマフラーで擦り始め、静電気を起こし、2人に渡す。
風船を平行にし、くっつけようとするが、静電気の力によって反発し、くっつける事ができない。
「磁石のようなもの」と、傳治郎の「科学うんちく」攻撃が再び始まる。



またまた傳治郎の術中にはまった形になったが、そこは天下のW。
辻ちゃんがグルグルと力いっぱい風船を回したり、加護ちゃんが髪の毛に風船を近づけたり、
傳治郎の「うんちく」を放置し、話を聞かずに勝手に遊び始めて応戦する。
これにはさすがの傳治郎も苦笑である。
が、傳治郎も「科学」に命をかけた男である。どんな手段を使ても「うんちく」だけは譲らない。



怪しげな模型を取り出し、力ずくでの「うんちく披露」を始めたのだ。
ピンクの物体が風船、黒い物体がマフラー。
元々はプラスマイナスの電気を同じ量持っている2つが摩擦することによって、
マイナスが片方に移動し、静電気が起こる。
見ている私も「なるほど」と納得してしまう程、傳治郎の「うんちく」は簡単で分かりやすい。

「加護ちゃん、マイナスが移動した側はプラス・マイナスどっちになりますか?」
傳治郎が遂に直接的な質問攻撃を始める。
加護ちゃんは「マイナスです。」と無難に返す。
「簡単な質問だったですかね。」と傳治郎。「覚えました。」と一歩も引かない加護ちゃん。
地味ながらも玄人好みの攻防だ。



「では辻ちゃん、マイナスを取られた方はプラス・マイナスどっちになりますか?」

「マイナスです!」

一瞬、空気が変わった!
予想もしてなかった辻ちゃんのボケ解答に傳治郎が肩透かしを喰らった感じだ。
ここか!ここがチャンスか!
自分の頭の中にあるストーリー通りに事を運ぶタイプの傳治郎には、
辻ちゃんのエキセントリックな攻撃が一番効くのかもしれない。
民放ではお馴染の辻ちゃんのボケ発言も、NHKという舞台では破壊力が更に増す。
辻ちゃんはどんな舞台であっても決められたレールの上は走らない。流石である。
徹底的に「うんちく」を潰す!傳治郎を倒すにはここしかない!



つづく。