9.12.その女、進化中につき〜松浦亜弥コンサートツアー2006秋 『進化ノ季節・・・』


※ネタバレあり。




初日のライブを見終わった時、あまりの気持ち良さに笑ってしまった。
見事なまでにこちらの予想を裏切ってきたそのステージに公演中も何度もにやけてしまった。
年頭に彼女自身が宣言した通り、彼女は己の道を迷うことなく今突き進んでいる。
まったくもって頼もしい。とても気持ちの良い天晴れなライブだった。あっぱれ!!



春ツアーでストリングスとピアノを導入し、「歌を聞かせる」という点に焦点を当てた構成で
見事に新しい場所に登りつめた彼女。
ハロプロのコンサートに1つの新しい風を吹き込んでくれた。
モーニング娘。は生バンドを従えたツアーでスタートしたので、ある意味では原点回帰と
言えなくもないが、一度オケを使い始めたハローが再び生演奏をコンサートに導入するというのは
その必要性も含めて非常に考えづらかった。オケを使ったコンサートが当然である流れの中で
自ら直訴して生演奏を勝ち取ったのは、紛れもなく彼女自身。
自分が一度手にした物を彼女が手放すはずはない。
7月に行われたファンの集い、その握手会の際に1人のファンが彼女にこう声をかけたそうだ。
「秋のライブも生演奏お願いします!」すると彼女は一言「分かってる!」とだけ答えたそうだ。
まさに彼女らしい彼女ならではの一言。

春ツアーから2ヶ月半の期間を置き、今年2度目のツアーがスタート。
今回はブラス隊3人+ギター+キーボードの5名のバンドマンを従えてのツアーになると
事前情報が出ていた。そして昼と夜と公演内容が若干違うことも本人の口からラジオで語られた。
わかっているのはこの2点、前回のツアーから新曲は何一つ発売されていないこの状況で、
どのような松浦亜弥を見せてくれるのだろうか?


場内アナウンスが終わり、客電が消えると幕が上がり出す前に彼女の歌声が聞こえだす。
「ずっと 好きでいいですか」。
まっ白い衣装に身を纏った彼女がステージ中央で歌っている。
出だしはアッパーな曲で盛り上げるのがハローライブの定石ではあるが、
あえてスローな曲でスタートするあたり、何やらただならぬ物を感じる。
続けて「渡良瀬橋」。イントロが流れた瞬間、客席にどよめきが起きた。
間違いなくあのどよめきはスローナンバーが連続した事への驚きであったと思う。
「渡良瀬橋」では間奏の部分で自らピアニカを手に取り、演奏を披露。
たどたどしい演奏だけど、心に染みるシーンであった。

まさかのスローナンバー連続コンボでスタートを切った後、最初のMC。
そこで彼女は今回のツアータイトルの意味について語る。

人として、そして「歌手・松浦亜弥」としても、進化をしたい時期に来たと、
そのような思いから、今回は『進化ノ季節・・・』というタイトルにさせていただきました。


前回のツアーで自らの意思によって初めて生演奏を導入した彼女。
あの時が彼女の歌手生活にとって第2のスタートラインに立った瞬間だったのかもしれない。
新たな地点に立った彼女はそれで満足することなく更なる進化を目指し始めた。それがこのツアー。
「申し訳ないけど、違うから!」翌日のMCでは彼女は笑いながら客席に向かいこう言い放った。
あなた達の期待してる物とは申し訳ないけど違うことをやりますよ!彼女のその宣言通り、
今までのツアーとはまったく違う物がこれ以降、披露されることになる。

MC終わりで「気がつけば あなた」。曲が終わると客席からブラス隊が突如登場し演奏を始める。
そのまま通路を通りステージへ行進して行く。3人共お揃いの黒いスーツに黒いグラサン姿。
ステージに上がり「The美学」のイントロ部分の演奏が始まる。
曲中はあややと一緒にブラス隊もダンス。あややが右にステップして動くと一緒に移動してダンス。
生演奏をただ入れただけでなく視覚的にも魅せるショーに仕上げている。
「GOOD BYE 夏男」「ナビが壊れた王子様」「宇宙でLa Ta Ta」とノンストップで続く。
ブラス隊は演奏してない時は常に踊ってる感じ。まさか彼らにここまでやらすとは思わなかった。

ブラス隊をバックに従えて4曲ノンストップで歌うこの部分は、今までのライブに一番近い流れではある。
ここまではいわゆる「フリマネ」をしに来た人でもいつもと変わらず乗れる感じだろう。
この後にGAMの「Thanks!」を1人で歌い(ミキティ部分はモニターに映るミキティが歌う設定)、
その流れで映画の予告編上映。ここはこのツアーにはまったくもって必要ない部分であるが、
宣伝期間なので仕方ないと思って我慢。流れが途切れ非常に勿体ない場面ではあるが。
おそらく厚生年金(&武道館)あたりでミキティが登場してGAM披露って事になると思われる。

MC。「スケバン刑事」流れの撮影裏話が終わるとギターのトニーを呼ぶ。
ステージ中央にイスが2つ並び、そこに座りながらギターの伴奏のみで歌い出す。
「可能性の道」。彼女の歌手生活まんまを歌ったようなこの歌詞は
その場面、場面で聞いてる者に色々な絵を見せてくれた。
「私と私とあなた」のラストで歌った時、代々木の大会場で歌ったあの時、
ハロプロパーティーで歌ったあの時、それぞれに違う景色が見えたけど、
ギターの伴奏のみでいつもよりスローなテンポで、感情を込め、時にはやさしく、
時には力強く歌い上げる今回はより一層彼女の可能性の道が
ハッキリと目の前に見えた気がする。松浦亜弥のソウルが感じられた1曲。

続いて「ハピネス」。2番からはギターのトニーもサビの部分でコーラスで参加し、
後半では彼女もタンバリンを叩きながら歌いだす。
前回のストリングスとの共演場面は背筋を伸ばして聞く感じがあって聞いてる方も
ちょっと緊張感があったけど、今回はリラックスしながら彼女の歌に酔いしれる感じ。
今回の方が個人的には好み。「歌」を聞いてるなって感じられる瞬間だった。


歌い終わり、ちょっとしたMCを挟み、いよいよフルバンドをバックに歌う場面。
まずは「YOKOHAMA SING A SONG」。
ジャジーな雰囲気が漂いお酒でも片手に聞きたい気分(酒弱いけど)。
サックスの音色がとても心地良く、過去のハロー現場とはまったく違う雰囲気が感じられる。
思わずグラス片手に横の客でもナンパしたくなる感じ(横はおっさんヲタだったけども)
ちょっとした小芝居を挟み「オリジナル人生」に突入。
発売当初は背伸びした感じに聞こえたこの曲も今の彼女には見事にはまる。
ちょっとハスキーな感じで歌うとこも、大人の色気は相当なもの。

ここでバンドメンバーのみの演奏が入る。
この辺りになると「ここあやコン会場だっけ?」って気分がしてきて、サイリウム持ってる奴とかが
滑稽に見えてくる。

ヲタ殺しメドレー。
「好きすぎてバカみたい〜桃色片想い〜ね〜え?〜SHALL WE LOVE〜LOVE涙色〜めちゃホリ」
曲名だけ見ると、めっちゃノリノリメドレーですやん!と思いたくなるところであるが、
そこは進化ノ季節。ボサノバ風なアレンジでスピードを落とした感じで進んで行くので
「桃色」で指差ししようとしても微妙にタイミングは合わず、「ねぇ〜?」でぼよ〜んする事もできず。
今までのヲタ乗りを完全に封じる素晴らしくアダルティなアレンジ。
でも、L・O・V・Eは頑なに入れるヲタ。悲しいかなこれがヲタの性なのか。ヲタも進化しないとね。

田島貴男(オリジナルラブ)が出てきそうな雰囲気の「LOVE涙色」が終わると、
突如リズムがスカ調に変化。息を吹き返したかのごとく「おい!おい!」叫び出すヲタ。
それを遮るかのように早口で喋りだす彼女。

从‘ 。‘)<さあお父さんもお母さんもお兄ちゃんもお姉ちゃんもお爺ちゃんもお婆ちゃんもみんな一緒に歌ってね!はい!

えええぇぇぇぇぇ〜!!!!!!ちょwwwwwwwwwwwwおまっwwwwwwwww

いつもとまったく違うリズムで急に歌えと言われても流石のヲタもすぐに反応できるわけもなく
ほとんど歌えない。

从‘ 。‘)<声が足りないんじゃないかな?今度は動きも一緒に!!

あわてふためくヲタを見て楽しむように進めていく彼女。
春コンDVDの副音声で、

从 ‘ 。‘)y-〜<アタシ「Yeah!めっちゃホリディ」とかかなり飽きてるよ?

とぶっちゃけてただけあって、めちゃめちゃに壊してきた。
「めちゃホリ」の乗りを引き継いだまま「デート日和」に突入。ノンストップって感じ。
生のギターにブラスが加わったこの曲は相当にかっこいい。

「恋してごめんね」
このバンド編成が一番ピッタリはまってたのがこの曲だったんじゃないだろうか。
キーボードの人も肩からかけるタイプに変更し、ステージ前に出てきて演奏。
とにかく気持ちいい!ブラス隊最高!個人的な高まり具合はここが最高潮だった。

ラストは「I know」。生演奏は入るものの、基本は通常バージョンなので
今までノリに困ってたヲタも待ってました!と大暴れ!
しかし、ここも通常通りには終わらせない。
ラストいつも通りに「いっせいのせっ、ふぅ〜!」とジャンプしようとすると、
一拍ずらす感じのアレンジになってるので勢い余ってジャンプしたヲタ撃沈。
最前で撃沈したヲタを指差し「ざまーみろ!」的な笑顔を見せる松浦さん。鬼だ。


アンコール:「夢」
「ずっと 好きでいいですか」のCDは買ったまま開けてなかった私は
恥ずかしながらこの曲を知らなかった。でも一発でこのブルースナンバーにノックアウト!
こんなスゲー曲をアンコールでやるなんて恐ろしい。ここまでやってくれたらもう何も言えない。
がなる感じに歌う低音の迫力あるボーカルが曲にピッタリはまっていて身動きとれずに聞いていた。
昼公演ではなんと英語バージョンの歌詞で歌うという凝りよう。
この曲に対する彼女の思いが感じ取れる。

最後のMCで二度目のメンバー紹介。ここでバンド名「べっちょまえバンド」の由来説明。
べっちょまえ=大丈夫!(姫路弁)
「私の安心できる人達です。落ち着く。すごく支えてもらってます!」
今までもゲストでハロメン達が登場したり、パーティーで一緒に廻ったりした事はあった。
しかし主役の彼女を完全に支える役、引き立てる役に徹するサポーター的なメンバーと
ステージに立つ事はなかった訳で、彼女にとってはこの関係がやはり一番居心地がいい気がする。
主従関係と言うと言いすぎかもしれないけど、松浦亜弥が完全に主役であり、彼女を引き立てるために
他のメンバーが全面的にサポートするこの体制。
これを見てしまうと彼女のライブにゲストが入る余地はもうない気がする。

オーラスの曲「女の友情問題」はステージ上も客席もみんなで最後のお祭り、
騒いで終わるといった感じ。
今までのラストとはかなり赴きが違い、あっさりと終わってしまう感じもありちょっと拍子抜けというか、
終わったあと「あっ!終わっちゃった」ポカーンみたいな感じはあるっちゃある。
前回のラストが究極の幸せオーラに包まれて終わったからそのギャップもあるかも。


これが進化した形だとは思わない。まだまだ進化の途中。
先に向かって夢に向かって、新しいことをどんどん取り入れてやって行こうとしてる最中。
ここはこうならいいのにと思うこともまだたくさんある。
でも、そんな事よりも彼女が終始歌うことを楽しんでる姿が伝わってくることが何より素晴らしい。
今後バンドメンバーも慣れてきて、もっとバンドとしてのとしてのまとまりが出てきたら
さらに凄いことになりそう。このツアーは行けるだけ行きたい!そう思った。

本当にうらやましい。松浦亜弥さん、そして松浦亜弥さんを信じて着いて来てるファンに
激しくジェラシーを感じたライブだった。私の理想とするライブがここにあったよ。
こうゆうのやろうぜ!加護ちゃん!